特定非営利活動法人 ヒューマンインタフェース学会

ホーム > イベント > HIS2009講習会

 

hi2009_logo.gif ヒューマンインタフェースシンポジウム2009
2009年9月1日(火)

1.質的データの統計的検定法(ノンパラメトリック検定)
オーガナイザ: 竹内 勇剛(静岡大学)
講師:青山 征彦(駿河台大学)

2.人間中心設計に基づく実践的インタフェースデザイン
オーガナイザ: 鱗原 晴彦(U'eyes Design)
講師:黒須 正明(放送大学)
小川 俊二(カイデザイン)
山崎 和彦(千葉工業大学)
鱗原 晴彦(U'eyes Design)

3.知ってみよう!ヒトと触れあうアクチュエータとその応用
オーガナイザ:井野 秀一(産業技術総合研究所)
講師:島田 茂伸(東京都立産業技術研究センター)
昆陽 雅司(東北大学)
佐藤 満(昭和大学)
高岩 昌弘(岡山大学)
石引 力(トキ・コーポレーション)

4.ヒューマンファクターズの基礎
オーガナイザ:綿貫 啓子(シャープ)
講師:石橋 明(東北大学)
稲垣 敏之(筑波大学)
河野 龍太郎(自治医科大学)
田中 健次(電気通信大学)


コース1
「質的データの統計的検定法(ノンパラメトリック検定)」

オーガナイザ:竹内 勇剛(静岡大学)

1. 質的データの統計的検定法(ノンパラメトリック検定)

青山 征彦(駿河台大学)

この講習では、調査を行うにあたって、どのような点に気をつけるべきなのかを学びます。 午前中は、調査票の設計を中心に、午後はノンパラメトリック検定の扱いを中心に講義します。 ノンパラメトリック検定は、手軽な検定としてよく用いられますが、 適用できないデータに用いているなど、誤った使用例も散見されます。今回の講習では、 カイ二乗検定やウィルコクソンの符号つき順位和検定など代表的な検定を採り上げて、 適用上の留意点や実際の解釈の仕方などをお話ししたいと思います。

専門分野:認知心理学,認知工学

主要著書:
『メディア心理学入門』(学文社 2002年)(共著)
『説明の心理学 説明社会への理論・実践的アプローチ』(ナカニシヤ 2007年)(共著)
『はじめての教育効果測定』(日科技連 2007年)(共著)

略歴:
1998年4月 筑波大学 文部技官(準研究員)
2001年4月 駿河台大学 現代文化学部 専任講師
2003年4月 駿河台大学 現代文化学部 助教授(2007年より准教授)
2009年4月 駿河台大学 心理学部 准教授
日本教育心理学会で常任編集委員、日本質的心理学会で研究交流委員を務める
日本認知科学会,日本心理学会,日本読書学会,日本認知心理学会各会員

aoyama.jpg

コース2
「人間中心設計に基づく実践的インタフェースデザイン」

オーガナイザ:鱗原 晴彦(U'eyes Design)

1. 人間中心設計に基づくインタフェースデザイン
-新たなユーザビリティデザインの方向性を考える-

黒須 正明(放送大学)

1.ISO13407改訂(ISO9241-210)のポイントはどこにあるか
ISO13407は、現在、ISO9241-210として改訂作業の途上にある。その改訂の考え方と特徴を説明する。
2.デザインプロセスに対する考え方
デザインプロセスについてのISO13407からISO9241-210への考え方の変化を紹介し、その批判的な検討を行う。
3.デザインプロセスごとに必要な方法論
デザインプロセス全体を大きく3分割し、それぞれにおいて必要な方法論を整理する。
4.デザイン関係者と求められるコンピタンス
デザインを行う関係者のあり方を、コンピタンスという形で整理する。
5.人間中心設計に関する資格認証
来年から実施予定のユーザビリティ資格認定の方向性を紹介する。

専門分野:ユーザ工学,人工物発達学

主要著書:
「ユーザビリティテスティング」(監訳) 2007 翔永社
「エマージェンス人間科学」(分担執筆) 2007 北大路書房
「ワークショップ人間生活工学、1&3」(分担執筆) 2005 丸善
「ペーパープロトタイピング」(監訳) 2004 オーム社
「ユーザビリティテスティング」 2003 共立出版

略歴:
1978年 早稲田大学文学研究科博士課程満期退学、日立製作所中央研究所入社
1988年 日立製作所デザイン研究所に異動
1996年 静岡大学情報学部に転属
2001年 メディア教育開発センターに転属
現在、メディア教育開発センター教授、理事長補佐、総合研究大学院大学文化科学研究科研究科長、教授 NPO 法人人間中心設計推進機構機構長

2007kurosu.png

2. ユーザーインターフェースデザインの実践
-デザインプロセスとアイデアディベロップメント-

小川 俊二(カイデザイン)

組み込み型機器、アプリケーション・ソフトウェア、またWebを介した情報発信やWebアプリやサービスにいたるまで、 人々が操作しなければならないコンピュータシステムは増える一方である。また使用者の拡大、使用の多様化は、 新しい概念の製品を大量にはき出す結果となっている。これらは他との差別化のためもあり、 複雑で入り組んだものになりがちである。こういった状況において、コンピュータ関連製品の使用性をデザインするにあたっては、 コミュニケーションをデザインするという側面とともに、製品のアイデンティティをいかに創り出すかということも重要な課題になってくる。
ここでは、ユーザーインターフェースの実践的なプロセスの解説をするとともに、上記の視点をふまえた問題点を共有したい。

専門分野:
プロダクトデザイン,ソフトウェアデザイン,ユーザーインターフェースデザイン,インターラクションデザイン,情報デザイン,デザインツールに関する研究および開発

主要著書:
「見せるユーザー・インタフェース・デザイン」(訳書)1993年 日経BP社

略歴:
千葉大学工学部工業意匠学科卒業、GKインダストリアルデザイン研究所にてプロダクトデザイン。 株式会社リコー、株式会社ザウルス、株式会社ソフトディバイス、有限会社カイデザインにて コンピュータ関連の機器やサービスに関するデザイン、企画、コンサルティング。デザイン学会会員、 人間中心設計推進機構理事。多摩美術大学上野毛校講師、公立はこだて未来大学客員教授。

2009ogawa.jpg

3. インタフェースデザインおけるプロタイプ
-プロトタイプの概要とペーパープロトタイピング手法のワークショップ-

山崎 和彦(千葉工業大学)

ユーザーインタフェースは、ユーザーが目にすることができる視覚的要素と、 その裏でユーザーインタフェースを支えている情報構造が重要となる。 インタフェースデザインのプロトタイプとは、ユーザーが目にすることができる視覚的要素が、 ユーザーの操作によってどのように変化するのか目に見えるように表現したものである。 インタフェースデザインはハードウェアと比較して全体が把握しにくい点があるので、 早めにプロトタイプを作ることが望まれる。
ここでは、インタフェースデザインのプロトタイプの概要を理解して、その中でも重要なペーパープロトタイピングについてはワークショップで実践的に学ぶ。
1.UIにおけるプロトタイプ手法
2.代表的なプロトタイプ手法の概要
3.ペーパープロトタイピング手法のワークショップ
4.これからのプロトタイプ手法とは

専門分野:製品やシステムに関する工業デザイン,ヒューマンインタフェース・デザイン,ユニバーサルデザイン, ユーザーセンタード・デザイン,情報デザイン,デザインマネージメント等に関連する実践および研究

主要著書:
「使いやすさのためのデザイン」(共著)
「ユニバーサルデザイン実践ガイドライン」(共著)
「デザインセクションに見る創造的マネージメントの要諦」(共著)

略歴:
1979年京都工芸繊維大学工芸学部卒業後,クリナップにて住宅設備、家具のデザインを担当,日本IBMにてデザインを担当, ThinkPadブランドの育成に貢献,2003年日本IBMユーザーエクスペリエンスデザインセンター長(技術理事)。 博士(芸術工学),東京大学大学院博士課程満期退学,日本インダストリアルデザイナー協会職能委員会委員,日本デザイン学会評議員。 現在は大学教育とデザインコンサルティングに従事。作品はiF賞(ドイツ),IDEA賞(米国)など国際的なデザイン賞を多数受賞。 国際会議等での講演多数。ニューヨーク近代美術館WorkSphere展に作品選定。

4. インタフェースデザインの評価
-電子政府向けユーザビリティ・ガイドライン付属文書より-

鱗原 晴彦(U'eyes Design)

HCD、UCDなどユーザインタフェースデザインを評価するには、 創造的なユーザビリティの側面と標準的なユーザビリティの両側面から評価を実践することが必要である。 前者には感性的な評価にも取り組む必要があり、実務で取り組んでいる手法を解説する。 標準的なユーザビリティの側面は、本年6月に内閣府より公開される「ユーザビリティ・ガイドライン」に、 紹介されている評価の考え方、手法群、実践例を紹介する。
1.感性評価、感性リサーチ実践例
2.内閣府内閣官房IT担当室主導 ユーザビリティ分科会策定
「電子政府ユーザビリティ・ガイドライン 付属文書6 利用品質の測定項目、目標設定、測定方法の例」より、概要と評価手法の紹介
3.電子政府の評価事例とHCD-Net自治体Webサイト 評価概要紹介
4.HCD導入効果測定、組込み業界の取り組み紹介

専門分野:ユーザセンタードデザイン,Usability Business

主要著書:
ユーザビリティ ハンドブック(共立出版、共著)
ユーザビリティテスティング(共立出版、共著)
GUIデザインガイドブック(海文堂、共著)

略歴:
1982年金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業.2001年株式会社U'eyes Design 代表取締役. 特定非営利活動法人人間中心設計推進機構 事務局長.筑波大学大学院、首都大学講師、 目に見えない操作性をビジュアル化し、商品のユーザビリティ向上に19年間従事し、 カーナビ、携帯電話、デジタルカメラなどの使いやすさ構築に取り組む.



コース3
「知ってみよう!ヒトと触れあうアクチュエータとその応用」

オーガナイザ:井野 秀一(産業技術総合研究所)

1. ピエゾアクチュエータとその応用
-視覚障害者用情報端末 TAGUI-

島田 茂伸(東京都立産業技術研究センター)

視覚障害者の生活支援機器の開発分野では,古くから触覚に情報伝達を行うデバイス,所謂触覚ディスプレイが開発されており, 読書機としてのオプタコンや,図画をピンの凹凸で提示するピンディスプレイなどがあります. 本講ではこれらデバイスに採用されているピエゾアクチュエータの解説を行います. また後半には指で直接操作できるピンディスプレイと音声出力を融合したTAGUI(Tactile-Audio GUI)をご紹介し, デモンストレーションを行います.視覚障害者の利用により触覚情報提示に実績を有するこれらデバイス, およびその要素技術としてのピエゾアクチュエータの解説がご参加者各位のインタフェース研究の一助になれば幸甚です.

専門分野:ロボティクス,メカトロニクス,福祉工学

主要著書:
・The Evaluation of Agreement Between Dynamics of Electric Wheelchair and Human Behavior, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 16 (4), pp. 434-442, 2004.
・オプタコンの機械特性と人間の触覚特性との適合度に関する研究,電子情報通信学会論文誌 D,Vol. J91-D (5),pp. 1296-1304,2008.他

略歴:
2004年北海道大学大学院工学研究科博士後期課程了.同年電気通信大学SVBL非常勤研究員. 2006年東京都立産業技術研究センター研究員.2007年より電気通信大学非常勤講師併任.現在に至る. 以来,ロボティクス・メカトロニクスの研究,特に触覚を用いたインタフェース方式の研究開発に従事.博士(工学).

shimada.jpg

2. 高分子ゲルアクチュエータとその応用
- 振動刺激を用いた触覚ディスプレイ -

昆陽 雅司(東北大学)

ヒトの皮膚に刺激を与えるアクチュエータとして親和性の高い,高分子ゲルアクチュエータの概要と, 皮膚感覚を再現する触覚ディスプレイへの応用について解説する.また,触覚ディスプレイで用いられる アクチュエータ技術の現状について解説し,講演者が提案する振動刺激を用いた触感合成手法を紹介する. この手法は高分子ゲルアクチュエータだけでなく,圧電素子やボイスコイルなど幅広いアクチュエータで実装が可能である. 触感のリアリティだけでなく,オブジェクトを動かしたときの摩擦感や押しつけ感など,ユーザインタフェースに応用可能な 「使える」触覚呈示技術を紹介する.最後に,講演者が現在開発している携帯情報端末用の触覚ディスプレイや マスタ・スレーブ型触覚伝達システムについて紹介し,デモンストレーションをおこなう.

専門分野:ハプティックインターフェース,ロボティクス,アクチュエータ

主要著書:
・Applications of Ionic Polymer-Metal Composite: Multiple-DOE Devices Using Soft Actuators and Sensors, Electroactive Polymers for Robotic Application, Artificial Muscles and Sensors, Ed. K. J. Kim and S. Tadokoro, Springer-Verlag Press, Chap. 9, 2007 (分担執筆)
・IPMC Based Tactile Displays for Pressure and Texture Presentation on a Human Finger, Biomedical Applications of Electroactive Polymer Actuators, Ed. F. Carpi and E. Smela, John Wiley & Sons, Ltd, Chap. 8, 2009(分担執筆)

 

略歴:
2004年神戸大学院自然科学研究科システム機能科学専攻博士課程修了. 2004年慶應義塾大学大学院理工学研究科COE特別助手. 2005年東北大学大学院情報科学研究科助手,2007年同研究科助教,現在に至る.博士(工学). IEEE,日本機械学会,日本ロボット学会,計測自動制御学会,日本バーチャルリアリティ学会の会員.

konyo.jpg

3. 水素吸蔵合金アクチュエータとその応用
- 身体にやさしく接するために -

佐藤 満 (昭和大学)

介護支援機器やリハビリテーション機器に要求される条件は安全性はもちろんですが, 利便性や快適さ,使い勝手など様々です.そうした機器に適したアクチュエータとして開発されたのが水素吸蔵合金アクチュエータです. その特徴と動作の原理,自立支援・介護支援機器への応用の実例を紹介します.また,ヒトはどのように身体動作を実現しているのか, 熟練した介護者の腕はどのように動いているかなどの観点から,身体運動機能を補助・代行する福祉機器に要求される将来的な技術課題についても解説します.

専門分野:福祉工学,リハビリテーション工学

主要著書:
・Portable pneumatic actuator system using MH alloys employed as assistive devices, Journal of Robotics and Mechatroncs, 19(6), 612-618, 2007
・運動神経生理学講義(翻訳), 大修館書店, 2002

略歴:
1987年北海道大学医療短期大学部理学療法学科卒業.理学療法士.1993年東京都立大学工学部電気工学科卒業. 1995年北海道大学大学院工学研究科修士課程修了.2006年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.工学博士. 1997年昭和大学医療短期大学講師.2006年昭和大学保健医療学部准教授. 日本理学療法士会,日本機械学会,日本ロボット学会などの会員.

sato.jpg

4. 空気圧アクチュエータとその応用
- 医療・福祉分野への応用を目指して -

高岩 昌弘(岡山大学)

空気圧駆動システムは空気の圧縮性に起因する低剛性特性のため本質的な安全性を有し, また,パワーレベルが人のそれと同程度であることから,パワーアシストなど人と直接接触して 動作をする装置のアクチュエータとして有用です.本講習会では,空気圧システムの基本特性について述べた後, 空気式パラレルマニピュレータを用いた手首リハビリ支援装置,乳癌触診訓練装置について紹介します. また,人の体重を利用した空気式歩行支援靴やゴム人工筋について簡単なデモンストレーションを行います.

専門分野:制御工学,ロボット工学

主要著書:
・Positioning control of pneumatic parallel manipulator, International Journal of Automation Technology, Vol.2 No.1,pp. 49/55,2008
・空気式パラレルマニピュレータを用いた手首部リハビリテーション支援装置の開発-療法士の徒手訓練動作の獲得と手首特性の多自由度計測-,日本ロボット学会誌,vol.25, No.8, pp.1251/1258, 2007

略歴:
1967年7月17日生.1992年岡山大学大学院工学研究科修士課程生産機械工学専攻修了. 同年岡山大学工学部機械工学科助手.1996年同システム工学科助手.2000年同システム工学科講師. 2005年同大学院自然科学研究科講師,2007年同准教授.現在に至る.

takaiwa.jpg

5. 形状記憶合金アクチュエータとその応用
-バイオメタル活用の基本とヒューマンインタフェースとしての可能性-

石引 力(トキ・コーポレーション)

バイオメタルは形状記憶合金アクチュエータの一種であるが、金属組織の変形方向を揃えた内部構造をしており、 機能異方性形状記憶合金とも呼ばれている。通常時には一般のものよりも柔らかく、加熱時には巨大な歪み率で縮み、 冷やすと元の長さにほぼ自動的に戻る。これによりバイアス力(元の長さに戻す外力)をほとんど必要とせず 駆動デバイスへの活用可能性が高い。特に熱を運動に変換するアクチュエータのため、小さな領域での活用に向いている。 また、動作状態が電気抵抗値の変化にリニアに対応するスマートマテリアルであるため、他にセンサを設けることなく フィードバック制御が可能である。本講演ではバイオメタルの基本的な特徴や使い方、活用の向き不向き、 応用のポイントなどについて実際の商品化例などをもとに紹介する。 そしてそれらを踏まえヒューマンインタフェースへの活用可能性について述べる予定である。

専門分野:機械工学

略歴:
1999年 早稲田大学理工学部 機械工学科 卒業
2003年 早稲田大学理工学部助手
2006年 早稲田大学WABOT-HOUSE研究所 客員講師
2007年 トキ・コーポレーション株式会社 研究開発部 研究員(現職)
同年  早稲田大学プロジェクト研究所 客員研究員
2008年 早稲田大学博士課程修了 工学博士

Ishibiki.jpg

コース4
「ヒューマンファクターズの基礎」

オーガナイザ:綿貫 啓子(シャープ)

1. ヒューマンファクターズの基礎とエラー対策
-航空分野における取り組みを中心に-

石橋 明(東北大学)

ヒトの長い進化過程を経て、失敗や事故から本能的に教訓を学び、様々な安全対策を蓄積して今日の安全な社会を構築してきた。 その中で培われてきた「人間の基本的特性」を考察し、時として人間能力の限界やエラー誘発要因として作用する様子を解説する。
さらに、様々な要因によって誘発されるヒューマンエラーのメカニズムを検討し、「当事者エラーと組織エラーの概念」を整理する。
人間の内面的な要因だけでなく、周囲を取り巻く様々な要素も、時としてエラー誘発要因となることも把握しておかなければならない。 ヒューマンファクターズを理解するうえで、様々なモデルや手法が提案されているが、これらを実務的に活用する方法も検討する。
この講義では、「何が、エラーを誘発するのか」という視点から、一般的なヒューマンファクターズの基礎的理論を解説し、 専門分野の講師へバトンタッチする。

専門分野:認知心理学,人間工学,安全工学,ヒューマンファクター工学,事故調査・事象分析

主要著書:
『事故は、なぜ繰り返されるのか』(中央災害防止協会)
『リスクゼロを実現するリーダー学』(自由国民社)
・Information-Sharing on Factors that induce Human Error in Aviation 2008
Capt. Akira Ishibashi Proceedings of the 1st East Asian Ergonomics
Federation Symposium Kitakyusyu Japan
ほか

略歴:
1969年中央大学法学部卒.同年全日空入社.1972年同社定期機長.1999年全日空定年退職、飛行時間19500時間. この間に、FSF-Japan日本支部事務局長、アジアパシフィックエアライン連盟テクニカルチェアマン、日本航空機操縦士協会常務理事などを歴任。
1995-2001年早稲田大学大学院人間科学研究科にてヒューマンファクターの研究に従事. 1998年(有)日本ヒューマンファクター研究所の設立に参画、研究開発室長兼事務局長.
2001-2003年筑波大学先端学際領域研究センター客員研究員
2003年から、国土交通省航空保安大学校講師
2003-2007年東海大学海洋学部講師
2005-2007年JR西日本安全諮問委員
2006年1月から、(財)航空交通管制協会、航空交通安全報告制度(CATS)分析委員
2008年4月から、現職のまま東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻
2009年4月から、JR西日本安全研究所客員研究員

・学会等への参画: 国際航空心理学会、日本人間工学会、計測自動制御学会、ヒューマンインタフェース学会、 プラントヒューマンファクター学会、国際経営文化学会、失敗学会、組織失敗行動学会など


Ishibashi.jpg

2. 航空事故事例から学ぶヒューマンエラーとその対策

稲垣 敏之(筑波大学)

 

技術の進歩は,状況を認知・解析し、今何をなすべきかを決め、それを実行に移すことができる知能機械を出現させた。 それらは人間機械系の安全性や快適性の向上に貢献しているが、人との間に予想もしなかったような不整合をもたらすことがある。 たとえば航空分野では、多機能インタフェースによるエラーの誘発、人と機械の意図の対立、機械への不信と過信の交錯、状況認識の喪失、 「オートメーション・サプライズ」などが知られている。「事故原因の70~80%はヒューマンエラー」といわれることもあるが、 事故の背景には、人の特性を十二分に考慮しなかったデザインに問題があったのではないかと思われるケースも少なくない。 本講義では、航空事故・インシデントの具体的な事例に基づいて、ヒューマンエラーを低減し、人と機械が「自然」な形で協調(共生)できる システムを実現するための方策や今後の課題を考察する。

専門分野:人間機械共生系(リスク認知,人間中心の自動化,ヒューマンマシンシステムの信頼性と安全性,ヒューマンインタフェースの数理解析と認知工学的評価)

主要著書:
・T. Inagaki, “Adaptive Automation: Sharing and Trading of Control.” In E. Hollnagel (Ed.), Handbook of Cognitive Task Design, Chapter 8 (pp. 147-169), Lawrence Erlbaum Associates, 2003.
・稲垣敏之,垣本由紀子,「機械システムとヒューマンエラー」,大山正,丸山康則編,事例で学ぶヒューマンエラー,第3章(pp. 99-142),麗澤大学出版会,2006.
・T. Inagaki, “Towards Monitoring and Modelling for Situation-Adaptive Driver Support Systems,” In P.C. Cacciabue and C. Re (Eds.), Modelling Driver Behaviour in Automotive Environments, pp. 43-57, Springer (2007)
・稲垣敏之,「リスクを見つけて制御する」,鈴木勉編著,リスク工学概論,第1章(pp. 1-20),コロナ社, 2009.
・稲垣敏之,「人と高度技術システムのミスマッチ」,鈴木勉編著,リスク工学概論,第5章(pp. 84-103),コロナ社,2009.

略歴:
1974年京都大機械系卒。1979年同大学院博士課程精密工学専攻修了。同年ヒューストン大。1980年8月より筑波大。 現在、システム情報工学研究科教授。工博。 この間、1990年-1991年カッセル大(アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨学研究員)。 計測自動制御学会マンマシンシステム部会主査、IEEE Reliability Society Japan Chapter Chair等を歴任。 現在、国交省先進安全自動車(ASV)推進検討会座員、同技術開発分科会委員、 日本学術会議「事故死傷者ゼロを目指すための科学的アプローチ」検討小委員会委員等。 システム制御情報学会論文賞、ヒューマンインタフェース学会論文賞等を受賞。電子情報通信学会フェロー。


Inagaki.jpg

3. 医療システムにおけるヒューマンエラーとその対策

河野 龍太郎 (自治医科大学)

現在の医療システムは安全のための管理が全く不十分である。そのため、(1)エラーを誘発する要因の数や種類が極めて多く、 (2)エラー発生後の発見や対応などの多重防護壁が極めて弱い。
ヒューマンエラーは、人間の生まれながらに持つ諸特性と人間を取り巻く広義の環境により決定された行動のうち、 ある期待された範囲から逸脱したものである。エラーが発生しやすいところには、まずエラー誘発要因がある。医療システムは このエラー誘発要因が非常にたくさんある。
安全なシステムを構築するためには、安全確保のための仕組みが、まず、(1) 設計の段階で組み込まれていなければならない。 次に、運用においては、(2) システムを構成する人間と機械の品質が保証されなければならない。さらに、(3) システムに内在する危険性を 常に監視・予測し、必要な場合は事故やトラブルが発生する前に対策をとる仕組みがなければならない。
講義では、以上について事例とともに説明する。

専門分野:ヒューマンファクター工学,心理学,医療安全学

主要著書:
著書:医療におけるヒューマンエラー、医学書院、2004.
編集・著:医療安全への終わりなき挑戦、エルゼビア・ジャパン、2005.
編著:実務入門 ヒューマンエラーを防ぐ技術、日本能率協会マネジメントセンター、2006.
分担著:「国民主役」医療への道 なぜ起こるのかを理解し防止対策に協力すること、日本医療企画、2007.
分担著:事故と安全の心理学 リスクとヒューマンエラー、東京大学出版、2007.
分担著:ナーシング・グラフィカEX① 医療安全、メディカ出版、2008.

略歴:
元航空管制官。航空管制業務中に航空機を衝突コースに誘導するというエラーを経験。エラー防止を目的に心理学を専攻する。 東京電力㈱入社後は主に原子力発電プラントのヒューマンファクターを研究。 現在、自治医科大学医学部でメディカルシミュレーションセンター長、医療安全学の研究、および同附属病院医療安全対策部で 病院のリスクマネジメントに従事。日本人間工学会認定人間工学専門家。事故におけるヒューマンファクターの研究をライフワークとし、 ヒューマンファクター工学をベースとした体系的なヒューマンエラー対策を提案している。 日本心理学会、日本人間工学会、医療の質・安全学会などの会員。


Kono.jpg

4. 医療分野におけるヒューマンエラーとその対策

田中 健次 (電気通信大学)

医療事故の中には、初歩的なヒューマンエラーが原因で起こっているものが少なくない。 エラープルーフ構造やヒヤリハット訓練など産業界の様々な工夫が取り入れられ始め、安全意識も高まっているが、 未だ改善すべき問題は多い。産業界の安全担当者の目には,なぜ対策を取らなかったのか? と思われる事故原因が多いのは事実だが、 産業界での未然防止手法を当てはめれば解決できるというものでもない。実際、医療現場では, 産業界とは比較にならないほど多種多様な条件の下での認知、判断、手作業があり,しかも中断作業が極めて多いなどの特徴がある。 それらの特殊性を考慮した対策が必要であり、そこでは作業者の経験や管理体制なども含めたアプローチが必要になる。 医療機器のアラーム対応遅れの事故などを例に、これらエラーを誘発する潜在要因と今後の課題を考えたい。

専門分野:システム安全学,リスクマネジメント論,緊急時の意思決定,組織事故解析, ヒューマンマシンシステムの信頼性と安全性,安全監視システム設計

主要著書:
(1) 田中健次:『入門信頼性』日科技連出版(2008).
(2) 田中健次,伊藤 誠:「信頼性・安全性確保のためのユーザと企業の情報共有と活用」日本品質管理学会誌「品質」,Vol.38, No.4, pp.41-47 (2008)
(3) 稲葉 緑,田中健次:「医療現場での作業中断によるヒューマンエラー」,電気通信大ISシンポジウム第12回「信頼性とシステム安全学」, pp.14-19 (2008).
(4) 田中健次:「いま期待されるフェイルセーフ設計」標準化と品質管理『改正消費生活用製品安全法とフェイルセーフ設計』特別企画、Vol.60 , No.9, pp.33-36 (2007). 
(5) Itoh, M., Sakami, D., Tanaka, K.:“Risk Compensation due to Human Adaptation to Automation for System Safety”, Tran. of the Society of Instrument and Control Engineers (計測自動制御学会論文集),Vol.43, No.10, pp.926-934 (2007).
(6) 田中健次:「社会に安心を生み出す安全技術とは」日本品質管理学会誌『品質』, Vol.34, No.4, pp.52-59 (2004).

略歴:
1982年京都大学理学部数学科卒、1987年東京工業大学大学院システム科学専攻退学。理博。 茨城大学工学部助手を経て、1995年電気通信大学大学院情報システム学研究科助教授、2004年教授。 この間、英国マンチェスター大学研究員(J.Reason教授)。日本医療機能評価機構患者安全推進協議会委員、 東京消防庁救急業務懇話会委員、日本看護協会事故事例分析検討委員会委員、経産省消費経済審議会製品安全部会第三者委員会委員。 IEEE(SMC Japan Chapter vice-Chair 2003-04)、医療の質・安全学会(評議員)、日本品質管理学会(理事)、 計測自動制御学会などの会員。日本科学技術連盟品質管理誌QC賞。


Tanaka.jpg



シンポジウムホームページへ
学会ホームページへ